副道院長の道須が、東京桜台道院に所属する拳士に話を聞くシリーズです。
今回は、不破道院長にも同席していただき、親子で稽古に通っているお父さんと小学生の男の子の二人にお話を伺いました。(2024年8月)
Yさん・・・3級、アラフィフ男性。実直であり笑顔が素敵な拳士で、道院の行事、裏方作業、大会スタッフなどなど、白帯時代から今まで献身的に道院を支えてくださっています。
Mくん・・・2級、小学6年生男子。3年生の時に入門。ほんわかした雰囲気で道院の癒し系と言われる男の子です。ちょっと変わったTシャツを着ていることが多くそんなところでもみんなを楽しませてくれます。
入門した頃のこと
道:今回お話を伺うにあたって、どういう経緯で入られたんだったかを思い出そうとしまして。そしたら、入ったのが2021年。3年生の11月に入ったのかな。 10月にお母さんから連絡があって、それから体験をして、12月16日に入門式だったようです。Mはその頃のことって覚えてる?
Mくん:まず学童に、K先生(別の道院の先生)がいて。
道:教えてくれたんだ。少林寺拳法っていうのがあると。
Mくん:言ってくれて、やってみようかなって。
道: そういう繋がりが元々あったんだ。それから連絡をくれて。初めて道院来てみてどうだったか覚えてる?
Mくん:武道? を見るのがあんまりなかったから、すごって思った。
道:初体験だったんだ。そうだよね。みんな道衣着てるし知らないとびっくりするね。Yさんも一緒に来られたんですよね。
Yさん:そうです。Mがなかなか入門を決意しなくて、見学だけで3、4回。 見学で一緒にやってみようって言われてもやらなくて、ずっと見てるだけで、3回目ぐらいにようやく初めてやって。
道:そうでしたっけ。その間もYさんはずっと一緒に。
Yさん:私は付き添いで来てて。Mが入門を決めて、それと一緒にだったかな?
不:どっちかっていうと、Yさんの方が先にやりますっていう感じでしたね。 一緒にやろうと思いますと。
道:その時ってなんか家で話し合いとかしましたか? 話はあまりしてないけど、やろうかって感じになったのかな。
Mくん:うん。
道:なるほど。Yさんがやるってなったのはどうしてでしたっけ。こちらからお誘いして?
Yさん:お誘いしていただいたのと、一番は不破先生の法話を一緒に聞くことに興味を持って、私もこの話を聞く中に入りたいなと。
道:そうか。体験の時もじゃあ、法話の時間があって。
Yさん:法話を聞いていて、これからも一緒に聞きたいなっていうのが、正直、率直な感想で。
道:なるほど。じゃあ、入門してやるようになってからどう、すぐ慣れた?
Mくん:思ったよりすぐ慣れた。
不:最初はね、全然みんなと喋らなかった。覚えてる?
Mくん:たぶん。合宿の頃からかな。千葉行った時。
道:確かにあれでだいぶ変わったよね。やっぱり一緒にね、寝起きして。
Yさん:始めた頃は、木曜日の夕方になると「早く行こう、早く行こう」って言ってましたね。
道:Mがですか? へぇ、そうだったんだ。
Yさん:パパがもたもたしてると「早く早く」ってね。
道:楽しみだった?
Mくん:うん、楽しみだった。
続ける中で感じていること
道:もうあれから2人とも茶帯だもんね。Mは2級になったんだ。Yさんがこの間3級になって。何か続けてて、難しいなとか大変だなとかって思ったことってある?
Mくん: 技を・・・組演武の足の動かし方とか。
道:そっか、そういうのが難しい。Yさんはどうですか。
Yさん:そうですね。やっぱり体捌きとか。うん、そういうのが難しいなと思って。 簡単に出てこない。どうしても棒立ちになっちゃったり。
道:手の方に集中したりすると、足を動かすのが難しいですもんね。Yさんは、お仕事もされていて、続ける中で、時間的なことだったりとか、続けるのに苦労されてるようなこととかってないですか。
Yさん:仕事の時間は、ある程度は自分でコントロールできるところもあるので。週に1回と週末ぐらいで、ちょうどいいぐらいですかね。時間もそんなに長くないですし。
道:うん、そうですね。割と短時間で。集中型で。
Yさん:1回に5,6時間とかだったらちょっと大変ですけどね。
道:じゃあもう1つ質問です。Mは、少林寺拳法を続けてて、自分がちょっとなんか変わったなって思うこととかってある?
Mくん:うーん。
道:あまり自分ではわからないかな?
Mくん:うん。
道:Yさんから見てどうですか?
Yさん:まず続けてることに結構自信が持ててるんじゃないかなって。
道:うんうん。
Yさん:他に習い事もありますけど。辞めずにやってるっていうのは私からも偉いかなと。本人の自信にもなってるんじゃないかな。それと、周りに少林寺をやってる子がいないんで、本人の強みっていうか。
Mくん:それじゃん。学校に、少林寺やってる人って、多分1人しかいない。
Yさん:Mだけかな。野球やったり、サッカーやってる人はいるんですけど。自分は少林寺と決めてやってるからね。
道:そっか。他の子たちとは違うものを持ってるっていうのは、確かにいいね。
Yさん:友達になんか言われる? 少林寺のこと。
Mくん:うん。型やってよって言われる。なんかちょっと恥ずかしい。
道:そうやって言われるとね。
Yさん:見せないの?
Mくん:いや、先生にはちょっと見せたけど。
道:先生に見せてあげたんだ。先生なんて言ってた?
Mくん:すごいって言われた。
不:褒められたんだ。
道:この間の合宿でもさ、「飯器什器は手に持って」っていうのやってくれたじゃん。(Yさんに)ご飯を食べる時の唱和をみんなで言うみたいなやつがあって、最初の1日目、全部私が言ったんですよ。で、2日目に 誰かやってくれる人って言ったらMがね、手を挙げてくれたんだよね、真っ先に。だから、それがすごく嬉しかったよ。
今年、サブリーダーになったりしたじゃない。それってなんか変わった? 自分の中で、サブリーダーっていう気持ちで何か変わったとことかある?
Mくん:責任感? みんなを・・・切り替える?
道:あぁー、気持ちを?
Mくん:それがたぶん。
不:確かに夏合宿の時もね、真っ先に「基準」って言ってやってくれたもんね。もうK(少年部リーダー)がいない時はやるしね。
道:もうそれが当たり前みたいになってできるようになってるんだね。あまりにも自然すぎて、何も思わなかったけど(笑)
だから、今回の合宿では、Mがいい意味で目立ってた気がするな。 去年の合宿だと、みんなと一緒に遊んでるっていうぐらいの感じだったけど、今年はすごく、なんか中心になってきてるなっていう感じが、すごくした。
Yさんは、続けてて、自分の中でなんか変化だったりとか、感じるものってありますか。
Yさん:私も、 続けていられることはよかったなと。普段は体を動かしていないので。あとは、Mと一緒に いられる時間と、同じ目的、目標を持ってやることが、今のところいいかなっていうのはあります。
子供になにか習い事させたりっていうのはあると思うんですけど、大人も一緒に参加してやれるっていうのは。そんなにないと思うんですよね、サッカーにしても野球にしても。
不:そうですよね。(サッカーや野球だと)出れないしね、パパ(笑)
道:同じチームでサッカーやったりできないもんね(笑)
Yさん:やっぱり、それがかなり貴重かな。
道:確かに。
Yさん:でも、大会まで一緒に出られるなんて、最初は知らなかったですけどね。
不:そうですね。確かに、言ってなかったです。親子演武なんて。
Yさん:え?って。でもやっぱり出ると、また来年も出ようとか。
道:言われてみれば確かにすごく貴重なというか、あまりないことですね。うちでも少林寺拳法の話とかしたりする?
Yさん:あんまりしないですね。大体、Mがパパにダメ出しが。練習しようっていうけど、パパ違うとかって言われる。で、パパが、じゃあいいよって(笑)
不:(笑)
道:今回も練馬区大会一緒に出ますもんね。
Yさん:うん、そうですね。
不:親子演武にずっと挑戦してるもんね。
道:ほんとに続けて挑戦してるっていうのは、すごい素晴らしいことだと思います。Mから見て、どう。パパが少林寺拳法頑張ってるなって思ったりする?
Mくん:頑張ってるとは思う。
Yさん:(笑)思うんだ。
Mくん:パパが茶色帯に行ったのがすごいっていうか。前、パパが子供の時、K式(学習塾)を2か月ぐらいで辞めたっていうことを聞いたのね。
不:(笑)なるほど。
Mくん:だから(茶帯まで続けて)すごいなって。
Yさん:MはK式も続けてるもんね。忙しいよね、英語も行ってるもんね。英語も自分で行きたいって言って。
不:すごいね、いっぱいやってるんだね。
道:そうやっていろんな習い事をやってる中で、Mにとって、少林寺拳法はどういうものですか。
Mくん:えーっと、少林寺拳法やってる人が少ないから、自慢できる。
道:英語とかはやってる人、他にもいそうだもんね。
Mくん:何してるって聞かれる。
道:説明するの?
Mくん:なんか、武道だよって。あと、人を攻撃するんじゃなくて、自分の身を守るためにあるっていうのを言ったりする。
道:それはいいね。ちゃんと説明してあげると。
不:すごい。そこまでちゃんと言ってあげるのはすごい。
Yさん:私も少林寺拳法っていうと、大体ジャッキーチェンのやつでしょって言われますね。
道:確かにそういうカンフーみたいなイメージになっちゃいますよね。
Mくん:中国ってイメージ。それをちょっとなくしたい。
Yさん:みんなそんなイメージだね。
道:日本の武道だよって。
これからの目標、やりたいこと
道:MとYさんがこれから、少林寺拳法で目標っていうか、やりたいこととか、こういう風になりたいなとか、何かある?
Mくん:黒帯は取りたいし、大人になるまで続けたい。あと学校の友だちを少林寺に誘いたい。
道:なるほど、それがやりたいことだ。素晴らしいね。今、横で話を聞いてた不破先生がめっちゃ嬉しそうだよ。
不:(笑)どうして大人になっても続けたいって思う?
Mくん:その、小学校の時から続けてると上手くもなるし。
不:そういう気持ちがあるのね。その気持ちは大事だ。なんでって聞いたのは、Mがどういうこと考えてるのかなって知りたいから聞いたんだよ。学校の友達を誘いたいなっていうのはどうして?
Mくん:うーん、なんか少林寺拳法を1人で 伝えたりしても、あーそうなんだってなるけど、2人ぐらいで言うと結構違う言い方で伝わったりもするし。
不:そういうことか。
Mくん:ここの学校に2人もいるよって。
不:伝えたいってことか。すごいな。
道:楽しみですね。Yさんはどうですか。今後なんかやってみたいこととか。こういう風になれたらみたいな。
Yさん:まずは継続することが一番ですね。3級の試験の時も直前になっても技ができなくて、ちょっとこれきついかなって正直思って、1人で体育館に行って半日を2回練習して、とりあえず形だけは覚えて。でもやっぱりちょっときついかなって。というのは、もう少し練習量を増やさないと、進級がだんだん難しくなるなっていうのを、3級から感じましたね。 そこをめげないで、やれるかどうか。
道:3級からね、グッて難しくなりますね。
Yさん:やっぱりちょっと道院の時間だけじゃちょっときついかなって感じましたね。やっぱり普段そんなに練習も長くないですし。
道:でも3級の時すごい頑張ってらっしゃった。
不:そうですね。びっくりしました。私は2日間の変化が。相当自主練をされたんだなと。確かに、そういう意味での継続って大事ですよね。そのスピードは全然人それぞれですけど。続けていけば必ず初段にもね、なれるので。
Yさん:まあ入った理由もそんなにもがっつりやりたいっていうか、黒帯目指したいっていう感じでは正直なかったんで。やっぱり道院の雰囲気とか、先生の話、教えとかって、そういう方が気持ち的には強かったんで。でも、やっぱり力愛不二じゃないですけど、やっぱり力も大切っていうのも、やっぱり教えの中の1つなんで。
道:そうですね。あんまりこう、プレッシャーになることなく。うん、基本的にはね、道院に楽しく来てくれてるのが、先生たちは一番嬉しいですね。
Yさん:Mにも今日もそうですけど、違う違うって言われるんで(笑)
不:もっと優しく教えてあげた方がいいんじゃないの(笑)
道:でも、もMだんだん下の子に教えることが増えてきたでしょ。そうすると、教え方もうまくなってるんじゃない。
不:変なこと教えてると怒られるもんね。
Yさん:私も本当、白帯の方とかに聞かれるとちょっと不安になったり。でもやっぱり教えることでやっぱ自分がうまくなりますしね。
道:これはすごく少林寺拳法のいいところの1つなので、どんどん下の級の人に教えてあげてください。
Yさん:はい、教えてあげられるように。
道:多分、ご自分が苦労されてるからこそ、教えられるというかね、伝えられることもあると思うので。
Yさん:年も年だから覚えるのが確かにだんだんきつくなる(笑)
道:うん。でも上にはSさんとか、いますからね(笑)
Yさん:他の先輩方もすごいなと思いますね。Aさんとか。
不:Aさんコツコツコツコツ続けていますね。まあ昇級はほんとにプレッシャーにならないのがいいですねっていうのはよくお話してることで。
道:特に大人はそうですね。
不:それだけが目的じゃないですからね。
道:Mはね、続けてさえいれば上がっていけると思うけど。どんどんうまくなってるし、色々変わってきて、気合の入れ方とかもすごく良くなってるから。
不:確かに気合はもう、何の問題もなく出るようになったね。
Yさん:最初はやっぱりコロナで、なかったからね。後から気合出していいよって言われても、ちょっと分からないところもあったのかな。
道:そうですね。入った時に出してなかったですね。そう考えたらもう去年からって言っていいんですね。去年に全部制限がなくなって。で、1年ちょっとぐらい。
Yさん:Mだけじゃなくて、みんなそんな感じでしたよね。気合いに関しては。
道:そうですね。私でさえ忘れかけてましたから(笑)
質問タイム
道:私からは聞きたかったことは色々聞けたので、すごくいい話をどうもありがとうございます。逆に何か聞きたいこととかありますか。
Yさん:じゃあ私からMに1つ質問。少林寺拳法を辞めたいと思ったことはありますか。
Mくん:いや、ない。
Yさん:ないんだ。
不:いいね、先生なんか毎日辞めたかったよ(笑)
道:Mから不破先生に聞きたいこととかない?
Mくん:不破先生はなんで少林寺を始めたんですか。
不:先生はね、学校でいじめられてたの。それで友達が全然いなかった。
それを見てた先生のお父さんが少林寺拳法でもやってみたらって言って、少林寺拳法の道場に連れて行ってくれた。そしたら、少林寺の友達がいっぱいできた。それで続けられたの。友達がいっぱいいたから少林寺拳法を続けられた。
道:不破先生にもそういう頃があったんだね。
Mくん:うん。
不:だから最初のMみたいに、ちょっと静かな子だったんじゃないかな。道場にいる時は少なくとも。ああいう子の方が少林寺拳法をやって自信つけてほしいなって。自分と同じだからと思って。
不:道須先生にも聞けば?
Mくん:道須先生はなんで始めたんですか。
道:道須先生はね、高校生になって部活何しようかなって思ってた時に、後ろの席の子が少林寺拳法やってみない?って誘ってくれたの。その誘ってくれた子は部活じゃなくて道院で多分やってて、道院かスポ少かでやってて、もうその時初段だったの。だからやっぱり仲間を増やしたくて、先生にも声をかけてくれて。
道:だからもしかしたらMもね、中学生初段になってさ、そうやって新しい学校入った時に、 少林寺拳法部があるかどうかはわからないけど、誘ってみると道須先生みたいな人が生まれるかもしれない。
不:そっか。その人がね、声かけなかったら、道須先生今ここ座ってないかもしれない。
道:やってない。絶対。
不:Mがやろうとしてることとつながったね。
道:Yさんから何かありますか。
Yさん:本人も続けていくって言ってるんで、そのまま継続してやってくれればなっていう感じですかね。今回の合宿もそうですけど、道院の友達が、いい友だちになってくれて。 ちょっとやっぱ学校の友達と違うかなって、話を聞いたり、普段の様子からも思いますね。なんかそんな感じしない? 学校の友だちとちょっと違うよね。少しね。
Mくん:うん。
道:何が違うんだろうね。
Mくん:うーん。なんか雰囲気が違う。
Yさん:学校はね、悪いことする友達もいたりもするし。色々あったもんね。
不:少林寺の雰囲気っていうのはどういう感じ?
Mくん:なんかみんな優しい。
Yさん:確かにね。みんながみんなに優しいよね。小学校だと、グループっていうか、仲間外れじゃないですけどやっぱそういうのはどうしても出てきちゃうんで。あいつは自分の言う事聞かないとかなると。少林寺はそういうのがないので。
道:じゃあ、話はつきませんが、遅くなっちゃうのでこれぐらいにしましょうか。今日は本当にありがとうございました。 M、ありがとう。これからもよろしくします。
Yさん:こちらこそよろしくお願いします。
編集後記: 副道院長の感想
法話を聞きたいという思いもあって入門してくださったYさんと、おっとりしているようで色々考えているMくん。不破道院長にも加わっていただき、丁寧に言葉を探すような楽しいインタビューの時間でした。
Mくんはこの春から中学生で忙しくなるかもしれませんが、焦らずじっくりと修練に励んでこられた二人ですので、これからも無理のないペースで親子での活躍を楽しみにしています!